UNITT 一般社団法人大学技術移転協議会 University Network for Innovation and Technology Transfer

理化学研究所 生体透明化試薬「SCALEVIEW®-A2

理化学研究所 生体透明化試薬「SCALEVIEW®-A2」

2011年8月、理化学研究所の脳科学総合研究センター 細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダー、濱裕研究員らが、尿素を主成分とする生物透明化試薬ScaleA2を作製し、生物サンプルを透明にしてサンプルを傷つけることなく表面から数ミリの深部を高精細に観察できる技術「Scale」を開発した。

これまでの生物サンプルの観察技術では、蛍光標識した構造を高精細に観察する際、組織の切片の蛍光画像を何枚も連続的に取得し、それらを積み上げるのが主な方法だった。しかし、このように画像を機械的に切り取る方法は、大変な労力を伴うだけでなく、三次元的に再構築すること自体が非常に難しいという問題を抱えていた。

Scaleは、観察対象を透明にすることで生体サンプルの深部観察を容易にし、観察の目的部分を可視化するための蛍光色素(特に蛍光タンパク質のシグナル)への影響もなくしたため、サンプルの深い部位まで高精細に観察した三次元のイメージデータを構築することを可能とした。

Scale技術は、オリンパス株式会社に実施許諾され、2011年11月にScaleA2を基に光学的調整を施した標本透明化液「SCALEVIEW(スケールビュー)-A2」が販売され、また同社によって透明化サンプルの観察に適した対物レンズ「XLPLN25XSVMP」が開発・発売された。現在、SCALEVIEW-A2透明化液は和光純薬工業株式会社を通じて販売されている。

2012年4月には、前述のSCALEVIEW-A2と対物レンズによって世界で初めて生体の透明化と深部の高精細なイメージングを可能にして細胞組織のイメージング観察を飛躍的に高めたことを評価され、米国において「2012 Edison Award」金賞を受賞した。同賞は、発明家として世界的に有名なトーマス・エジソンの名を冠した新製品およびサービスにおける技術革新を称える権威ある賞である。

学術界においても、Scale技術の開発を皮切りに、同じく尿素を主成分とした試薬を使ったCUBIC、異なる原理で生物サンプルを透明にするSeeDB、CUBIC、Clarity、Clear Seeといった多くの透明化技術の開発が世界中で巻き起こった。Scale 技術によって生物透明化という一つの研究ジャンルの幕が上がったことからも同技術が与えたインパクトは大きいものがある。

近年においては、研究グループはScale技術にさらに改良を施し、透明化の速度が上がり、かつ本来の微細構造を保って透明化させる「Scale S」を作製した。また周辺技術として3次元組織を抗体や色素で染色する技術「Ab Scale」、「Chem Scale」を開発し、Scale Sと併せることで、アルツハイマー病患者の死後脳における組織病変をさまざまな空間解像度で定量的に観察することを可能とした。この研究成果によって、アルツハイマー病の早期に生じるアミロイド斑の炎症性の特徴を明らかにし、同技術によって病態解明に大きく寄与することが示された。

SCALEVIEW-A2の効能・性能

「SCALEVIEW-A2」はホルマリンで固定された生体試料における光の吸収や蛍光を損なうことなく、光の散乱を除く働きを持つ水溶性の溶液である。また、同溶液に浸漬するだけで哺乳類動物の脳などの生体組織を透明することが可能である。光学特性である屈折率ne(20℃)は、1.377-1.381である。

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製品等の紹介写真

標本透明化液「SCALEVIEW-A2」

多光子専用対物レンズ「XLPLN25XSVMP」

ヒト死後脳における核化アミロイド斑とびまん性アミロイド斑の観察写真

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